思い出

中学を卒業してすぐ、親元を離れ、8年という月日を働きながら学んだ。
仕事と学校の合間を見て、ひとりふらっと旅に出るのが、楽しみだった。
                        
少ない休暇を利用して、せいぜい1泊か2泊の旅。
リュックを背負って列車、バスを乗りついで
見知らぬ町へ
                          

鈍行列車に6時間も7時間も飽きもせず揺られていた。
ずっと過ぎていく車窓の風景を眺めていた。

時折「どっから来たの?」「どこ行くの?」と誰かが声をかけてくる。
ひと駅かふた駅の間の出会いに、旅の空を味わいながら、
このままず〜っと、さすらいたいと思った。
帰りたくないと思った。
                        
                      
知らない海辺の町に降りて、青い海を見ながらいつまでも歩いたり、
何にもないような小さな駅に、降りて
ぶらぶら歩いただけで、帰ってきたこともあった。

見知らぬ町、風景、人々・・・それだけで十分だった。
ひとりで行く小さな旅は、日々の暮らしのしんどさを忘れさせてくれた。
                            
                               
そうして、目まぐるしい日々の中で、懸命に生きていた。
そんなあの頃、

よく聞いたり、口ずさんでいた曲。

                          
あれから数十年の月日が流れて、歳も重ねてきたせいか、一人旅が淋しいと思うこともある。
それでも、バイクで行く旅は、不思議とひとりでも淋しいと思わない。


バイクと風と・・・私の旅は、あの頃と何も変わってないような気がする